前号のD’s通信 Vol.19では、メディカルジャパン東京の視察を通じて、医療現場が直面する2040年問題や移動ロスの現状についてお伝えいたしました。
「D’s Cockpit」の導入から1年という節目を迎え、私たちが向かう次なるフェーズについてお話しいたします。
今週、私たちは「CEATEC 2026」および「Japan Mobility Show Bizweek 2026」に足を運びました。

「災害時の実態からつながる医療インフラへ」—共有された構造的課題
最先端テクノロジーの祭典であるCEATEC会場において、私たちが参加したのは、セッション「災害時の実態からつながる医療インフラへ:ポータブル電源と電動車給電が拓く在宅医療の新しい選択肢」で共有された現場のリアリティでした。

国土交通省からは、今年8月に改定された「電動車を活用した災害時の給電マニュアル」経済産業省・国土交通省 プレスリリース / 改定版マニュアルPDFの対象拡大や、避難所・住宅での医療機器給電試験など、技術面での前進が示されました。

しかしその一方で、在宅医療や医療的ケアの現場には、いまだ解決されない構造的な課題が残されています。
・数値が示す孤立の現実
長期停電時、医療的ケア児・者の79%が自宅待機を選択せざるを得ず、43.5%のご家庭が災害への備えを「何もできていない」と回答しています。
・分断される情報と制度の壁
自治体や自治会による当事者の把握・連絡体制は極めて脆弱であり、個別避難計画の実効性には「見えない壁」が存在します。
・「自己責任」というグレーゾーン
医療機器の規定や保証の観点から、ポータブル電源の公式な利用が制限される中、当事者家族は命を守るために自己責任での対応を余儀なくされています。
登壇された全国医療的ケアラインの田中美紀氏は、「『何が安全か』『どう使用すべきか』という迷いの時間を無くしてほしい」と訴えるとともに、制度や技術の議論が「当事者抜きで進められてしまうこと」への強い葛藤を口にされました。
物理的限界と、ポラリティ(両極性)の思考
技術やマニュアルの進化(光)が進む一方で、行政・自治体・当事者間の連携の不備や制度のグレーゾーン(影)という現実が存在します。
さらに、今年、激甚災害となった豪雨や内水・河川の氾濫を思い起こせば、いかに優れた電動車であっても、ひとたび浸水・水没すればすべての機能が即座に停止するという物理的な限界があります。「技術や車があるから安心だ」という一方的な見方だけでは、現場の命を守ることはできません。
理想のテクノロジーと、シリアスな現場の課題。 ポジティブな可能性と、ネガティブなリスクや限界。
これらは分断されるべきものではなく、私たちが向き合う社会の「光と影」「理想と現実」という両極性(ポラリティ)そのものです。どちらか一方だけに目を奪われることなく、両面を冷静に見据える姿勢が求められます。
私たちがこの1年間、「D’s Cockpit」の運用を通じて取り組んできたのは、まさにこの両極性(ポラリティ)を現場で統合するための実践でした。
・平時の機能(利便性と安心の提供)
利用者様や医療者のもとへ安定した電源と通信を伴ってアプローチし、日々のケアや移動ロス削減を支える基盤となること。
・有事の備え(リスクと限界への対応)
地上インフラや通常のモビリティが機能不全に陥るリスクを前提に、独立電源や通信を確保し、危険から離脱するブレイクアウェイの選択肢をあらかじめ備えておくこと。
最先端のトレンドと現場の現実
その光と影の双方から目を背けず、D’s Cockpit導入からの1年間で積み重ねてきた検証を確かな基盤として、私たちは次なるフェーズへ歩みを進めます。
地域社会という実際の「ポラリティ・ポイント📍」において、「実行的BCP/BCMの実践」と、現場で働くスタッフの「QoW(仕事の質)」向上を一体とした実証アプローチへ。
持続可能な地域医療インフラの社会実装と、挑戦を続けてまいります。




